ステーブルコイン

「トークン化マネーの最前線:JPモルガンとブラックロックの戦略動向」

JPモルガン ブラックロック

2025年、トークン化されたマネーの競争がいよいよ本格化しています。商業銀行と資産運用大手が主導するデジタル通貨の新潮流が、従来のステーブルコイン市場や決済インフラを大きく塗り替えようとしています。中でも注目されるのが、JPモルガンの「預金トークン(JPMD)」と、ブラックロックが関わるステーブルコイン「USDtb」です。

本記事では、この2つの注目プロジェクトを軸に、2025年のトークン化マネーの最新動向と、それがもたらす金融インフラの変革について詳しく解説していきます。

JPモルガンの「預金トークン」JPMDとは?

基本概要

  • 商品名:JPMD(J.P. Morgan Deposit Token)
  • 発行体:JPモルガンのブロックチェーン部門「Kinexys」
  • ネットワーク:Coinbaseが提供するパブリック・レイヤー2「Base」上(パーミッション付き)
  • 対象ユーザー:機関投資家や法人クライアント限定(許可制)

特徴と意義

  • 商業銀行マネーをトークン化
    オンチェーン上で扱われるのは、実際にJPモルガンに預けられたドル預金が担保されたものです。これは、非銀行系発行のトラステッドなステーブルコインとは異なり、銀行の預金取扱基準や保険制度の恩恵を受けられる設計です。
  • 1:1完全担保+準備金スキーム
    Base上でのJPMDの取引は常に、オフチェーンのドル預金と連動しており、1トークン=1ドルのパリティを維持。準備金はいわゆる醸成預金(fractional reserves)方式で運用される見込みです。
  • 米下院可決済みのGENIUS法(Genius Act)に呼応
    2025年6月17日、米上院で可決された安定コイン規制法が、銀行主導のトークン発行に法的な枠組みを提供。JPモルガンはこの流れに乗ってJPMDパイロットを進めています。

なぜ注目?JPMDのメリットと市場影響

ポイント 解説
即時決済・低コスト Base上でサブ秒、サブセントの送金が実現。24時間365日稼働する銀行オンチェーンシステムです。
利子付与可能性 預金としての利子が期待でき、これは非銀行のステーブルコインには難しい魅力です。
既存の会計・リスクモデルとの統合 JPMDは企業のバランスシートにそのまま載せられ、分類や決済処理も同等。これにより利便性と信頼が高まります。
銀行間競争・産業への刺激 ビッグバンク主導のトークンが普及すれば、ステーブルコイン発行体や他の銀行に圧力がかかります。

ブラックロック関連の最新動向

BUIDLファンドとUSDtb連携(ブラックロック・ステーブルコイン)

  • BUIDL:2024年3月開始の、ブラックロックが運用するイーサリアム上の機関向けトークン化マネー・マーケット・ファンド。現在AUMは約28億ドルに達し、最大クラスのトークン化資産です。
  • USDtb:Ethena LabsとSecuritize共同で設計されたステーブルコインで、BUIDLを担保にする形で発行。Bybit等で最大5%のAPR利回りが提供され、透明性と流動性を兼備しています。

DeFiとの24/7スワップ実現

  • ブラックロックのBUIDLファンドとUSDtb間は、Securitize経由で24時間365日リアルタイム交換(atomic swap)が可能に。機関投資家とDeFiユーザーにとって商用活用の幅が格段に広がります。

トークン化テクノロジーの拡大

  • BUIDLはSolanaなど複数ブロックチェーンへも拡張中で、イーサリアムでは約27億ドルの資産がオンチェーン化。
  • BUIDLは、米証券トークン発行プラットフォームSecuritizeから最大の取り扱いボリューム(約28億ドル)を誇るファンドとして認識されています。

比較まとめ:JPMD vs USDtb(BUIDL-backed stablecoin)

特性 JPMD(JPモルガンの預金トークン) USDtb(BUIDL-backed stablecoin)
発行主体 商業銀行(JPモルガン) プライベート発行(Ethena+Securitize)
担保資産 商業銀行預金(準備金形式) マネーマーケット基金(米国債等が主)
ユーザー層 機関投資家・法人(パーミッション付き) 機関、DeFiユーザー(パーミッション無し)
保険・法的位置付け 銀行保険対象の可能性あり 銀行預金保証外、資産裏付け型
利用可能性 Baseチェーンを通じ24/7利用 DeFiインテグレーション(交換、レンディング)
利回り 銀行預金利回り期待 最大5%APRなど魅力的な利回り提供例あり

今後の展望とインパクト

  • 銀行と規制の進化
    GENIUS法の可決を受け、銀行業界では「預金トークン」や「ステーブルコイン」の公認制度化が進行中。規制と商機の双方が整いつつあります。
  • DeFiとトークン化金融の融合加速
    BUIDLとUSDtbの連携で、従来売買・利回り獲得などがブロックチェーン上で即時かつ透明に可能に。JPモルガンも同様に、Base上での迅速な流動性供給を目指します。
  • 業界間での競争構図の再編
    銀行発行トークン vs 非銀行ステーブルコイン vs CBDC(中銀デジタル通貨)の三つ巴の構図が鮮明に。特に機関投資家向けの資金移動では、JPMDやBUIDL等が選好される傾向です。

まとめ:トークンマネーの時代が到来

  • JPMDは商業銀行マネーをそのままブロックチェーンに乗せた革新的なステップ。その信頼性と利便性により、特に機関間取引における定着が期待されます。
  • ブラックロックのBUIDL+USDtbモデルは、マネーマーケット資産とブロックチェーン技術を融合させた新たな資金運用形態であり、DeFiにも繋がる可能性が広がっています。
  • 今後、 銀行間トークン、ステーブルコイン、CBDC の三者が補完しつつ競い合う構図が浮き彫りに。制度整備と実用化が進むなか、それぞれに最適な用途が明確になるでしょう。
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Shota
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2017年末から暗号資産に投資してます。 ビットコインを始め、アルトコインについても情報発信していきますので、よろしくお願いします。